マッチ対談
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- ゲスト財団法人神戸市産業振興財団 事業開発部部長 三好 栄三氏 / 株式会社ナカムラ 取締役部長 中村 和弘氏
- 聞き手加藤 豊
「神戸セレクション」とは?
神戸は昔から世界に門戸を開いてきただけでなく、上質な商品を確かな目で見出し、神戸らしいエッセンスを加え、多くの人々に受け入れられる文化を作り上げてきた独特の感性を持つ街です。
神戸セレクションは、出展希望者を公募し、その中から神戸らしい良質な商品を選定。日本最大のネットマーケット(楽天市場)や百貨店(大丸神戸店、小田急新宿店)で展示販売を行い、新たな神戸ブランドの創出を目指すものです。
その第1回「神戸セレクション」に(株)ナカムラの「2こまッチ」が選出され好評を博しましたので、今回はその主催者財団法人 神戸市産業振興財団の三好様と(株)ナカムラの中村様をゲストにお話を伺いました。
「神戸セレクション」WEBサイト http://event.rakuten.co.jp/campaign/kobe/
財団法人神戸市産業振興財団 http://www.kobe-ipc.or.jp/
(株)ナカムラ http://www.nakamura-kobe.co.jp/
加藤
三好さん、中村さん、今日はお忙しいところをありがとうございます。
私も2月6日~14日の会期中に小田急新宿店で開かれた「神戸セレクション」の会場に伺いまして、大変賑わっていた様子も拝見しましたが、まずはその「神戸セレクション」についてお聞きしたいのと、どうしてそこで「マッチ」が取り上げられたのかをお伺いしたいのですが。
そもそも、事の始まりは楽天さんからセミナーの共同開催のお誘いがあったのです。ただ、楽天さんのセミナーに協力するだけでは意味がない、もう少し神戸の地域の方々に役立つ企画を考えて欲しいと投げ返したところ、「宮城県では楽天を使って物産展をやっているからそういう企画なら一緒にできますが」というお返事がきました。なるほど、と思いましたが、私としては話題づくりとしてはまだ弱いと思い、「公募」→「選定」という形を思いついたのです。それも「神戸ブランド」というものをテーマにしました。つまり、例えば、丹波で作られていても「神戸牛」として売り出していますよね。そのように「神戸ブランド」としてものづくりをしていきたい企業に広く門戸を開いて公募をつのり、その中から「神戸ならではの良質な商品」を「選定」するという仕掛けで話題づくりを盛り上げていき、さらにはそれを楽天の中で展開していこうという形になっていったわけです。
三好
加藤
なるほど。まずは楽天さんとインターネットを使ったお話から始まったのですね?
そうです。もちろん今までもいろいろな行政がインターネット上に様々なサイトを起ち上げて地域支援を試みてきたわけですが、起ち上げた後、その先の展開が成功している所は少ないように思います。その点、「売らんかな!」という姿勢が強い楽天さんと今回我々が組んだことは間違っていなかったと思っています。
ただ、私としては、まだそれでも話題性に欠けると思っておりましたところ、神戸大丸の澤田店次長様がこの話に興味を持ってくれまして、この企画を神戸大丸でもやってみようという話になりました。
これはまさに私の願っていたことで、つまりネットだけでの展開ではなく、ネットで広めたものをリアルショップに戻していくところまでやらないとだめだと思っていましたから。
三好
加藤
よくわかります。僕もネットで見て興味を持っても、画面上の粗い写真だけではやっぱり不安なものがあって、手に取って見てみたいという感覚はありますからね。
そうなんですよね。ネットとリアルショップの両方があることが大切だと思うわけです。
それで神戸大丸さんの話が決まった後、今度は縁あって小田急百貨店さんからも「うちでもやってみたい」というお話をいただくことができました。これも嬉しいお話でして、これで東京からの発信もできると。
これでやっと「神戸セレクション」は効果的なカタチでスタートが切れることになったのです。
三好
加藤
三好さんとしては、一気にホップ・ステップ・ジャンプというカタチになっていったわけですね。
これまでも、さきほどお話が出たように「神戸牛」とか「神戸の何々」といった商品が出ていたわけですが、改めてこういう形で「神戸ブランド」をアピールして一般の方々に再認識させるということは大切ですよね。
そこで、今回第1回目の「神戸セレクション」では、33商品が選定されて、その中に(株)ナカムラさんの「2こまッチ」があるわけですが、今度はそちらの経緯をお聞かせいただけますか?
ご承知の通り、マッチ全般の需要は以前から減ってきていまして、メーカーとしての主なる販売先は一般ユーザーではなく、広告マッチとして使っていただいている企業が中心だったんです。ところが、昨今の禁煙ブームの中で「マッチ」自体もタバコを誘導させるということで広告マッチの需要も落ちてきていた。そこで、なんとか別な切り口を考えて一般ユーザーの方へ直接アピールできる方法はないかと模索していたのです。「マッチ」は神戸を代表する産業ということから、観光に強い神戸で、たとえばおみやげ屋さんとかでもっと展開できないか?
当社一企業の商品としてではなく「神戸のマッチ」というようなマークというかブランドを使えないだろうか?
と、考えていた矢先に、新聞で「神戸セレクション」のことを読んだんです。
その時、コンセプト的にはピッタリだったけれども、肝心の商品および商品デザインなどは何もできていなかったんです。しかし、新聞によると公募の締切がもう4-5日後に迫っていた。そこで、商品はまだないけれども、とりあえずコンセプトだけ書いて応募してみたんです。(笑)
中村
加藤
商品もないのに、よく選定されましたね?(笑)
いや、これにはちょっと裏話がありまして・・・。
まず先にご説明しておきたいのですが、「神戸セレクション」の選定は私がするわけではなく、きちんとした選定委員会が組まれています。しかもその選定委員のメンバーは著名な文化人の方々を含むそうそうたるメンバーなのです。その方々に今回の(株)ナカムラさんの案件をお話したところ、非常に受けが良かったのです。主なる理由は2つあったと思います。ひとつは、選定メンバーにはインテリアデザイナーとして活躍されている内田繁さんもおられまして、物を創りだすクリエイターの方々にとって「マッチ」というものは非常に感性を動かされるものらしく、「面白い!マッチをやりたい!商品はまだなくとも是非ともやりましょうよ!」という意見が出て来たこと。
もうひとつは、「マッチ」がかつて神戸を、そして日本を代表する産業であったこと。もっと言えば、「マッチ」が世界中に輸出されていったことにより神戸港の発展もあったんだということを、この選定メンバーの方々が知って心打たれた感があったのです。歴史の中で「神戸」を支えてきた「マッチ」を、今、応援していってあげようよ、という雰囲気が強かった。それで、(株)ナカムラさんは商品なしで応募されたにもかかわらず、かなりの初期段階で「神戸セレクション」の1品に決まったのです。
三好
加藤
なるほどねー。私自身グラフィックデザイナーですから、「マッチ」がクリエイターごころを捕えるという部分はよーくわかります。(笑)それに、歴史的にみて「神戸」に貢献してきた「マッチ」が今回の「神戸セレクション」に選定されるのも意味あることですよね。
では、商品づくりより先に決まってしまった後、中村さんはどういう過程を経ていったのですか?
さきほど言いましたように、この企画は一般ユーザーの方をターゲットに「神戸のマッチ」としてアピールすることがコンセプトだったので、まずはそのデザインをどうするか?というのが問題でした。「神戸」をモチーフにするといっても、なかなか面白いものが考えつかず、ともすると単なる観光名所の写真を入れたマッチみたいなことになりかねず、それでは面白くないというのもわかっていましたから。
そんな時、山崎さんというイラストレーターをご紹介いただいたんです。
中村
山崎さんは神戸市環境局が行っている分別ゴミキャンペーンの「ワケトン」というキャラクターも描かれている方なんですよ。神戸では子ども達にもとても人気のあるキャラクターなんです。
三好
山崎さんにお話したところ、ぜひやりたいと言っていただけたんです。
もともと彼は「2こまマンガ」という手法の推進活動を行っていたんです。そういう意味で「マッチ」は表面と裏面の2面を使えるので、ここでも2こまマンガで表現できるという点と、「マッチ」自体が環境に優しい商品=エコ商品だということもあって、話はとても盛り上がって山崎さんと一緒に作っていったのです。
そこで「神戸セレクション」に出品する完成形として、「2こまマンガを使って神戸を表したマッチ」、称して「2こまッチ」が誕生したわけです。また同時に「ワケトン」のキャラクターを使った「ワケトンマッチ」も併せて作りました。
中村
そうですね。商品づくりに入ってからは中村さんと山崎さんの二人三脚で進んでいきましたよね。
三好
加藤
「2こまッチ」は表面と裏面でクイズ形式のようになって「神戸」をほのぼのと表現されていて面白いですね。また「ワケトン」マッチは、マッチ箱のデザイン色に合わせて頭薬(マッチの頭の部分)の色を変えているんですよね。こういうのが受けるんですよね。一般の人はこの頭薬部分は赤か白ぐらいしかないと思っているらしいんですよね?(笑)
そうなんですよ。会場でもお客さんが「かわいいー」って言って、よく買って頂けました。
やはり、日常品の道具としてでなく、嗜好品としておみやげ屋さんなどで売ることを考えたら、こうした「ちょっとした驚きと面白さ」が必要だと思うんですよね。
中村
今回2つのデパートで行った展示・販売会で感じたのですが、実際、若い方々にとても注目を浴びて会場では良く売れた。これはもっとマッチを火をつける道具という「必需品」から、面白みや楽しみを加えた「嗜好品」に変えていかなければならないと思うのです。そして、それには大胆な発想の転換も必要だと。
マッチ業界以外の外部の人々からのアイデアをもっと取り入れるべきですよね。加藤さんが先日、出展された「オリジナル燐寸ラベル&マッチ箱アート展 vol.7マッチを考えデザインする・燐寸を彩る100人の小世界 」というような企画や、全国を巡回するような「マッチラベル展」なんかもやっていけるといいですよね。
三好
今回「神戸セレクション」として出品させていただいて強く感じたのは、1社ではできない宣伝力とユーザーへのアピール力が違ったんですよね。それで今後は数あるマッチメーカーが力を合わせてひとつの企画を起ち上げていくという話も進んでいます。
中村
加藤
では、来年は神戸のマッチメーカーが一丸となった企画がまた「神戸セレクション」から出てくる可能性もありそうですね!楽しみにしていますよ!